南アのエイズ孤児の数は、2011年の統計では210万人といわれています。
2009年の190万人よりも20万人も増加しています。
その中にはHIVに母子感染した子どもも多く存在しています。
多くのエイズ孤児は、おばあちゃんや叔母さんなどの家庭に引き取られて地域で暮らしていますが、誰からも拒絶されて施設で暮らしている子どももたくさんいます。
エイズ孤児の支援の際に必要な視点の一つは、孤児自身へのケアだけでなく新たな孤児をつくらないことです。
つまり、新たなHIV陽性者を生じさせないための予防教育や、HIV陽性者が治療を受けることによって命を失わずにすむための権利擁護(アドボカシー)の行動です。
それについては「HIV陽性者・家族の支援」に紹介しています。
子どもたちが親を失わないで済むために必要なことは、第1に親がHIVに感染しないこと。第2にHIV陽性者となった親が治療を受けることによって健康を取り戻すこと。
そのためには以下の4つの行動が求められます。
エイズの予防・啓発を急ぎ、これ以上の感染拡大を防ぐこと。
一人でも多くの人が、HIV検査を受けること。
感染の早い段階で治療を受けられるように、一人一人が行動していくこと。
HIV陽性者が貧しくとも治療を受け、生きる権利を保障する社会をつくっていくこと。
エイズ孤児の中には、HIVに感染してしまったHIV感染孤児も多くいます。
正しい知識があれば、HIVの母子感染は防ぐことが可能です。
また、幼い子どもたちが暴力の被害にあって感染してしまう事例も南アフリカでは多いので、子どもの虐待や犯罪防止教育も行っていくことが大切です。
母子感染を防ぐ教育の徹底により、感染孤児が1人でも増えないようにしていくこと。
子どもたちを大人の暴力(レイプなど)から守ること。
「子どもの権利条約」(国連条約)では以下の4つが子どもの権利の柱として掲げられています。
家庭や施設で安心して暮らせること。
栄養のある食事を食べ、健康でいられること。
学校へ通えること。
思いきり遊び、笑えること。
家族のエイズ死へ深い理解ができるようになること。
学業を続け、将来設計するための支援を受けられること。
自分自身と向き合い、自分を大切にする力(心のケア・感染予防する知識と行動力)を持てるようになること。
大切な人とのより良い人間関係づくりの支援。生きる見本となる大人と出会えること。
エイズホスピスと連携をとり、エイズで親を失った直後から家庭訪問して遺族全体のケアをしていきます。エイズ孤児に必要とされている支援は家庭によって様々です。
学校に行けなくなる子どもや、ストレスから病気になってしまう子どもたちのメンタルケアや、学校の先生との支援体制づくりを行なっていきます。
引き取られた家庭が貧しく食事を満足に食べられない子どもの場合は、その家庭の収入が安定するよう就労支援や家庭菜園づくりをしたり、子どもや家庭を支援する社会保障や福祉サービスにつながるようサポートしていきます。
私たちが出会った、多くのエイズ孤児が現在10代後半にさしかかり、進学の問題や貧困、対人関係の悩み、自分の家族のエイズ死についての意味づけなど、たくさんの壁にぶつかっています。
孤児のいる家庭と丁寧に向き合い、ソーシャルワークやカウンセリングを続けています。
エイズ孤児たちが学び続けるための、学用品や学費の支援を行なっています。
また、就職に役立つような資格をとるための、講習などに参加する費用の支援を行なっています。
エイズ孤児が私たちの支援に依存してしまわないよう、奨学金の申請を同時に行っていきます。
タウンシップやスラムで行なわれるイベントやキャンペーン、他の草の根団体の活動を支援したり参加していくことによって、マンパワーのネットワークを作っていきます。コミュニティの中で「子どもたちを守る行動がとれる」大人たちの輪を広げていくのが目的です。
子どもを暴力被害や虐待などから守る力を持っているのは、コミュニティ自身だと私たちは考えています。私たちが、啓蒙活動の中心になるのではなく、人の輪をつくることでコミュニティで暮らす人たちの「子どもを守りたい」という思いを確かなものとしていきます。
「自分たちのコミュニティを自分たちで守る」「コミュニティのために働きたい」という意欲を持っている若者たちの出会いの場を作り、活動のきっかけとなる機会を提供しながら草の根活動が誕生するように支えていきます。そうして誕生したのが、セチャバ・センターです。
セチャバ・センターでは多くの若者がボランティアとして働いています。失業中の若者や問題行動を起こしている若者も積極的に活動へ誘います。彼らも幼いエイズ孤児たちの「ロールモデル(見習いたい手本)」となっていけるよう、自分の役割を活動の中に見つけています。
エイズ孤児の暮らす病院や施設の訪問を続け、子どもたちが喜ぶ創作活動や遊びの場作りを行なっています。
コミュニティのソーシャルワーカーやカウンセラーと一緒に訪問活動をすることによって、子どもたちが将来暮らすことになる施設の外の世界とつながりを持てるよう配慮しています。
私たちがかかわっているエイズ孤児の中には、HIVに母子感染してしまった子どもたちもいます。
2004年から南アフリカではエイズ治療を無料で受けられるようになってきました。幼い子どもたちがきちんと治療を続けていくのはとても大変なことです。薬をもらえていたクリニックが閉鎖してしまったり心のケアをしてもらえないこともあるので、一人一人の子どもの近況を確認しながら、施設を出なければならない18歳の時期をサポートできるようかかわりを続けています。