ニバルレキレは、HIV・エイズや貧困の影響を受ける人たちのエンパワメントをめざすNGOとして、2003年から南アフリカ共和国で活動しています。
エンパワメントとは、一人一人の自尊感情が育まれ、生きる力を取り戻していくことを意味しています。
一人一人の心のケアや生活の支援を、福祉やメンタルケアの専門スタッフが行なうと同時に、生きづらさを乗り越えようとする住民自身によるコミュニティ活動を応援しています。
日本では2011年東日本大震災での津波や原発災害によって、首都圏に避難されている被災世帯の心のケアと支援を中心とした、震災支援のさまざまな活動「わかちあい@東京」をおこなっています。
ニバルレキレとは南アフリカ共和国の言語のひとつ、
ズールー語で「あなたは あなたであるだけで すばらしい」という意味です。
「ニバルレキレ。この名前を使って活動して欲しい。」
そう言ってくれたのは、エイズホスピスにある、小児病棟で生活している、HIV感染孤児たち。
ニバルレキレが活動を始めた時期、まだそのホスピスでは子どもたちは、
6歳まで生きられることが難しい時代でした。
でも誰もが、キラキラした笑顔でした。
親がいないこと。HIVに感染していること。
そういったことは、何一つ、子ども達の命の輝きを失わせていませんでした。
彼らからのメッセージを伝えていこう。
そう決心してから、10年以上がたちました。
私たちは今も、彼らのような子ども達が生まれ、そしてたくさん亡くなっていった場所、タウンシップやスラムで、
エイズや貧困とともに生きる人たちと一緒に活動しています。
2003年から始まったニバルレキレの活動では、
自分自身を大切にすることの大切さや、HIV感染は決して人の存在価値を損なうものではないことを、
南アフリカや日本の皆さんに伝えてきました。
南アフリカでは、出会う多くの子どもや若者たちが、HIVエイズや貧困の影響を受けています。
自分の人生に夢や希望を抱けずにいる子ども達ともたくさん出会います。
彼らを守っていく立場にある大人たちは、高い失業率に苦しんでいます。
エイズ禍は、南アフリカの人々の平均寿命を一時は50歳以下にまでしてしまいました。
子どもたちの「生きるうえでの手本」となる世代の多くがエイズで命を落としていきました。
アパルトヘイト体制が終わり、民主化した南アフリカで待っていた、エイズ禍と、格差社会の中での貧困。
その中でも草の根の活動を作り、支え合い、力強く暮らしている多くの人に私たちは出会ってきました。
私たちは、それらの出会った多くの人に、南アフリカの歴史だけでなく、文化や暮らし、
その中で大切にしている価値観などを教えてもらいました。
彼らとのつながりを大切にしながら、南アフリカで活動を続けています。
唯一無二の存在である自分の命を大切にすること。
幼い子どもたちが子どもらしく生きる権利を守ること。
思春期以降の子どもたちが、自分と向き合う月日に寄り添うこと。
自分と向き合う作業はときに過酷です。
ありのままの自分を受け入れ、認め、前に進もうと決めたときに、
初めて人は、他の人を大切にできます。
そのような自己肯定感情を育んでいくこと。
生きるためのさまざまなライフスキルを身ににつけること。
必要な支援につながり、孤立しないこと。
エンパワメントされていくこと。
そしてエイズで多くの人を失い、貧困に苦しんでいる地域が、
誰もに優しいコミュニティになっていくこと。
そのために、私たちは尽力していきます。
また、2011.3.11の東日本大震災以降、首都圏(主に東京)への広域避難世帯の方、
震災弱者の方との心のケア活動 「わかちあい@東京」を、私たちは行っています。
大震災や原発事故というトラウマ体験の克服。
当たり前の日常が失われてしまった喪失体験。
乗り越えながら暮らす月日にみえてきた、一人ひとりの生まれてからの原体験の中での苦しみ。
子育ての中での葛藤。
不安やかなしみを抱えた子どもたち。
そのような様々に揺れ動く心を、孤立せずに誰かに話せる環境づくりを行っています。
専門職による相談支援活動だけでなく、
様々な困難や喪失体験を乗り越えた当事者の方たちが、私たちと一緒に活動してくださっています。
生きづらさを見つめ、乗り越える力があるのは、その人自身です。
ありのままのあなたが、すばらしい。
ありのままの私が、すばらしい。
どんなに苦しくても。泣いても。
笑顔になる力を誰もが持っています。
必ず持っています。
たとえそれが今日でなくても。
かなしみや痛み、生きてきた歴史は一人ひとり違います。
紡いでいく物語も一人ひとり違います。
でも人は、わかちあい 支え合うことができる。
本気で誰かが生きる場所には なにかが生まれます。
一人一人の生きる日々。
その隣に一緒にいさせていただく。
それが私たちがずっと大切にしている価値観です。